「M&A」って言葉、聞いたことはありましたけど、それまでは具体的な内容をぼくは知りませんでした、ただ言葉だけ知っている感じ(よくあるね、知ったかぶりワード)でした。
つい先日「下町M&A 中小企業の生き残り戦略」という本を読んだので、今日はそのご紹介です。
全体として、ストーリー形式で、それぞれの立場からの心情や、会話が読みやすく描かれているので、難しい言葉が苦手な人(ぼく自身)も読みやすいものでした。
本書の舞台となる水田部品工業は典型的な下町の中小企業です。ここでいう「下町の中小企業」とは、たとえば東京都大田区に密集する生産技術に長けた企業であり、上野や浅草に数多ある衣料品の製造メーカーやある程度の規模の卸問屋のような企業を指しています。
社員規模は数十人から100名程度、年商は数億円からせいぜい三十数億円でしょうか。本社屋は、その成長に合わせて次々と増築を重ねたためにつぎはぎで、社長自ら秀でた技術者や企画営業マンとして、現場の最前線にたっているイメージです。
物語の全体像を理解すると、読んでみたくなりますよ。
そしてもちろんM&Aの理解が深まります。
まず売り手である水田部品は、年間売上6億円に対して、債務を6億円抱えているという事情がありました。
そして、この本の例では売上と債務が同金額(6億円)である中、年間の利払いとして2000万円という、会社の経営を苦しめる問題の種をどう解決していくのか、というところまでが丁寧に描かれています。
民事再生法による「法的整理」の例ではなく、法律に頼らない「私的再生」の例
近年民事再生法による再生事例も多くみられますが、連帯保証をしている代表者は個人破産手続きを選択することになります。民事再生法も破産法制の一つなのです。
一方で、法律に頼らない「私的再生」という分野があります。これは「手続き」だけでは進めていくことはできません。
水田部品のケースは、赤字の企業をM&Aを利用して小さくとも堅実な黒字企業に変貌させ、残債務6億円を任意で解決していくという、私的整理を伴った私的再生の実例です。
丁度、数日前に「スカイマーク 民事再生法の適用を申請」というニュースがテレビ等で飛び交ってました。この本も丁度終盤に差し掛かっていた時だったので、その時のニュースは少し理解できるものになりました。
そもそも民事再生法以外の方法(私的再生)で、経営を再生する方法があるんだ、ということを知りました。
何度も目を通すことにより「M&A」を知り、より理解を深めることができる、この本はおすすめですよ。
それではまた次回お会いしましょ。